傑作! 津軽塗オーダーメイド仏壇『格子ism』デビュー!!
津軽漆芸協同組合
神 規人 理事長

 今年7月、津軽塗と格子の組み合わせで美しくそしてコンパクトに仕上げられた仏壇の販売を開始し、一般家庭でも買い求めやすい金額も相まって大反響を呼んでいる津軽漆芸協同組合の神規人理事長にお話を伺った。

○木地師の支援を目指して
 神理事長は、津軽塗漆器の販売に関わりをもたれて30余年。20代後半まで大手ビール会社に勤務し、弘前に戻ってきた際に津軽塗の小売部門でアルバイトをしたのが始まりで、郵便局への就職を辞め27歳で独立した。
  長く津軽塗の業界に関わる中で、売上と業界の雇用がピーク時であった昭和50年代からバブル崩壊後、伝統工芸品全般が売れ難くなる時代も経験してきた。
  津軽塗に限らず、漆器全般は木地師と呼ばれる製品の原型となる木工品を製造する者と塗師と呼ばれる木地師の挽いた木地に漆を塗る者で業界が構成され、その構成率は、木地師:塗師=1:30とも言われ、元来木地師の数は多くない。
 業界が最盛期に比して売上、抱える人材の数ともに約1/3の規模にまで減少する中、この木地師の後継者不足が深刻化。現在、市内2業者しか存在しなくなった。津軽塗は、箸から机までと他地域の漆器業界に比べ製品の幅が広く、木地師の技術は、価格、品質の両面から他の木工所ですぐに代用が効くものではない。
 こうした背景から「地元木地師の技術継承、木地加工場の確保が不可欠。これまでお世話になってきた津軽塗業界のために今できることは」と昨年、神理事長が中心となり、木地師の働く場の確保を目指し設立したのが、「津軽漆芸協同組合」である。
  組合は、木地を挽くための設備や業務の受注を目的としているが、これまでに津軽塗業界のため地元木地師を残したいという趣旨に賛同した賛助会員40名も新たに加えている。
  だが、「賛助会員の方々の支援もあり、加工場の確保について一定の目処が立ったように思います。しかし、まだ技術を継承していく後継者対策として抜本的なものとはなっていません。」と神理事長は話す。
その打開策として今回打った手がコンパクトにして美しく、そしてリーズナブルな仏壇である。

○格子ism

▲津軽塗オーダーメイド仏壇『格子ism』
  神理事長は、昨年自らの会社のオリジナル商品として津軽塗のボールペンを企画。(社)青森県物産協会での販売や引出物として採用されるようになった。従来から1本5,000円超の万年筆などはあったが、1本1,150円、2本で2,000円のこのボールペンは年間で2万本近くが売れ、業界内ではちょっとした売れ筋になりつつある。
 「バブル崩壊後、津軽塗の中でも特に高額な商品が売れなくなってきました。伝統工芸品であっても『値ごろ感』のあるものが出る(売れる)のが正直なところです」と話す。小売という消費者に近い場所にいることで消費者サイドの声をものづくりの現場へ伝えた一つの例だろう。
 今回販売を開始した組合の「津軽塗オーダーメイド仏壇『格子ism』」も企画は消費者の声からであった。
 神理事長の店に来た方との「うちには仏間が無くて仏壇の置き場がない。最近の新築は和室すらないね」と言う会話と、以前仏壇の一部にワンポイントの塗りを施す仕事を受けた経験から、企画が始まった。
 最初は、「そんなの無理だ。」というみんなの声。「でもやってみるか。」で始まり、「どうせやるなら、最近増えているマンション住まいの方や都市部に住まわれている県出身者の方向けに和室が無くても困らない仏壇をつくろう」と言うことになり、構造などの試行錯誤の上、今年の4月には全体に津軽塗を施した幅35cm、高さ42cmのコンパクトなサイズの仏壇が完成した。現在の組合ホームページでいうところの「最高級全漆塗り仏壇」がそれであるが、手間がかかる分、価格が100万円を切ることができず、富裕層でなければ買えない商品になってしまった。
 「和のイメージで津軽塗にもマッチするデザイン」かつ「津軽塗を好む方であれば富裕層でなくとも買い求めやすい価格」の実現について"格子"を用いることで検討を重ねた結果、今回の1536バリエーションを持つモダンでコンパクト、かつ135,000円からという驚きの金額での提供を可能にした「津軽塗オーダーメイド仏壇『格子ism』」が完成した。
  デザインや商品写真に関しては、3Dソフトの使い手でもある組合員の力が存分に発揮された。「彼の技術のお陰で、試作を一つひとつ造らなくても済んだ点が大きいです。また、企画を文字や言葉だけで伝えるより、このようなCGが手元にあることでお客様へも充分に伝えられます。」と笑顔。しかも、本物の『格子ism』を手に取った時、その質感がCGのイメージを超える出来映えになることで満足度も高まる。
 発売後は、地元紙は元より、葬祭ビジネスの全国的な業界誌に取り上げられるなど各分野からの取材も多く、受注も抱えるようになった。しかし、木地師が2社であること、十分な品質のため一定の期間がかかることから、現在、量産体制の確立を急いでいる。
 「取材のお陰で問い合わせが多く、仙台や東京などにお住まいの方のニーズが高いことが分かりました。量産体制が整い次第、仙台でPRを始めたいですね。」とうれしそうに話す。

○伝承者の確保へ向け

http://www.tsugarunuri.net/
  「正直、まだまだ売れているというところまでは行っていません。ですが、この『格子ism』が木地師の、ひいては津軽塗業界全体の再活性化の契機になればと思います。」と話す。さらに「この商品の試作にあたり、仏壇とマッチするように他の仏具も津軽塗にしたのですが、展示会や店頭ではこの津軽塗の仏具が意外と人気で、他の小物の注文も受けたりするようになりました。」とニッコリ。

津軽漆芸協同組合
組合事務所
弘前市大字東長町20番地
設立年月日
平成20年8月20日
組合員数
4名
出資金
1,000,000円
理事長
神 規人

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